習慣の抜け殻にBIMを詰め込む

一ヶ月ほど前、一級建築士の試験が終わり、これまでの勉強中心の生活リズムを調整しているうちに時間が経ってしまった。

試験の結果はまだ分からないが、今の時点で感じているメリットに「頑張れば毎日2〜3時間の可処分時間を確保できる」ということが実証された、という点が挙げられる。

これは、個人的にはなかなか目から鱗というか、流行りに乗っていうのならばこれまでは「ボーッと生きて」いた訳だ。

という訳で、せっかくなので可処分時間を資格勉強以外のアクティビティに充てるべくいろいろ「調整」しクオリティオブライフ的なものを上げてみようと画策している。こういった習慣に基づく時間管理は熱いうちに打たねば、いとも簡単に日常の怠惰に溶け出してしまうものだ。

そんな訳で意識は地を這う様に低いものの、習慣は意識高めの抜け殻となっている状況をうまく再利用してやろうと思う。

 

今何を学習するべきか。

そこで考えたのは木造BIMである。

私の所属する事務所はつい最近、これまで使っていた古いCADがVectorWorks Archtectに切り替わった。BIMが使えるこのソフトは、正直言って今の事務所にはオーバースペックもいいところだ。が、私にとっては僥倖という他ない。

まず、なぜ木造BIMを学んでみようと思ったかについて整理したいと思う。

私が現在、個人の建築事務所のスタッフとして行っている業務だが、はっきり言ってそのうちAIなどに取って代わられる可能性が非常に高いと思っている。ボスのスケッチなり簡単な図面から詳細な各種図面を書き起こし、模型を作り、打ち合わせに同席し、そこで出た変更を図面に反映する。確認申請の書類を作成し、現場管理を行う。これらの作業は効率的に漏れのない様に遂行するテクニックはあるだろうが、個性や独自性の様なものは一切必要ない。人工知能の方がよほどうまくやってくれるはずだ。つまりこの仕事は次のステップに必要な知識と経験を身につけたならばできる限り速やかに辞めるべきなのだろう。

一方で、私のボスのような人間は人を雇い続けなければならない(ボスは自分でメールを打つこともできないし、デジカメからパソコンに画像を移し替えることすらできない)。今、事務所のスタッフが全員やめれば彼もまた事務所を閉鎖しなければならないだろう。

そう考えると、今の私はある意味で、ボスよりはマシな状況であると言える。すなわち、もし私が独立し、事務所を構えるとしても人を雇わずある程度の現場をこなすことができる未来がすぐそこまで来ている様に思えるからだ。先ほどまでやや悲壮な私の現在の仕事観を書いたが、それは一スタッフの立場から見た場合であって、ボスになれば事態は一気に好転するかもしれない。

作図はBIMに、模型作りは3Dプリンターに(あるいはVRに)、確認申請業務はAI(人工知能までとは行かなくても支援ツールはすでにいろいろある)、唯一ハードが必要と思われる現場管理は当分、人間が必要だろうが、楽観的に考えれば人件費を払わず事務所を回していける支援ツールがこれから増えてゆくだろう。(BIMなんかは高価だが、人件費と比較すれば破格に安い)

ならば、とりあえず手をつけるべきはBIMだ。うまくいきそうな感じなら今の業務にも部分的に取り入れられるかもしれない。とりあえず終業後の時間を少しずつBIMの理解と練習に充ててみたいと思う。

気がかりなのはネットを検索してみてもあまり木造BIMを使っている事務所のブログや記事に行き当たらないことだ(もちろんエーアンドエーの広告記事は除く)

誰も使っていないのだろうか?いやそんなはずないよな・・・とやや不安だが、まぁとにかくやってみようと思う。やってダメならまた考えるさ。